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1935年創業の日本の革ジャンメーカーカドヤ。本社工場ヘッドファクトリーから生み出されるプロダクト、オーダーメイド、リペア、カスタムの仕様や製作過程、レザーやライダースジャケットにまつわるエピソードなどを発信。「日本のものづくりと職人の拘り」を綴ったブログです。

オーダーメイドとオールドレンズ  

先日のバーゲン期間中、お店のお手伝いで店頭に立っていると、本店の常連様からオーダーメイドのご相談を受けました。

コンセプトはズバリ「カメラマンベスト」

特に拘られているのは、カメラのレンズが同時に何本か収納できる立体ポケットを装備すること。

多収納に拘ったジャケットやベストを作らせて頂いたことは過去に何度もありますが、レンズ専用とは初めてです。

真っ先に想像したのは、内装にウレタンスポンジなどの衝撃吸収素材をしっかりと仕込んだ箱形の大型ポケットでしたが、お話を伺っていると、そうでは無さそうです。

お客様はウレタンスポンジなどの素材を革と組み合わせること自体に抵抗感を持たれていて、衝撃吸収は革の厚みだけで十分、そもそも衝撃吸収にはそれほど期待していない、と割り切っておられます。

しかし流石にこちらも心配ですから、レンズを守るためのいくつかの提案をさせて頂きましたが、その割り切ったお考えの奥には、私を黙らせるに十分な背景があったのです。

報道カメラマンとして過酷な現場をさんざんこなしてきた経験を持つお客様、カメラを仕事道具として酷使してきたからこそ理想のベストに何を求めるか、既にハッキリと見えているご様子。

お仕事としての「写真」は既に引退されていて、数年前に初めて手にした「デジタル」カメラに、お気に入りのオールドレンズを装着して趣味の写真を楽しまれている今は目下「勉強中」と控えめにおっしゃいます。

長年の相棒「ナイロン製のカメラマンベスト」は既にボロボロで、次は大好きな革でベストを新調したい、以前からそう考えていたとのことです。


では、実際に収納するレンズの現物と、愛用品のナイロンベストを参考品としてお借りできないか申し出たところ、早速翌日には大量の資料を持参してくださいました。

ベストが3着と、それにレンズが1、2、3、、、 6本!


anzanz


どれもこれも年期の入った単焦点のオールドレンズ、だから小さいわりにずっしり重い。

ライカのレンズは塗装が剥げ掛かり、中の銅色が薄らと露見して良い雰囲気です。

年式不明のロシアンレンズがあったりして、多国籍で縦横無尽なコレクション!

「昔のレンズは鉄で出来ているから頑丈、重いけど壊れないの」

「コンビニのビニール袋に入れてポケットに突っ込む、それだけで問題なし」

レンズ群を眺めていると、すぐに異変に気づきました。

どれも表側のレンズキャップが付いていないのです。

「要りませんよ、あんなの邪魔なだけ」

衝撃的な発言の数々、、、

趣味、とまではいかないものの、私もカメラと数本のレンズを好きで所有しています。

レンズキャップに対して確かに邪魔だな、と常々ストレスを感じていますが、キャップレスの発想は逆立ちしても出てきません。

なるほど、お客様が作ろうとしているベストのイメージが少しだけ掴みかけてきた。
こちらの固定概念は確実に邪魔だったみたいです。

ポケットに必要なのは、衝撃吸収というより、金属レンズの重量に持ちこたえる引っ張り強度と、瞬時にレンズ交換がしやすいように、取り出しやすい開口部。
ベストとはいえオールレザーの重さにレンズ数本が加われば、総重量はそれなり。 
肩にのし掛かる重さから疲労を軽減させるため、肩にこそ低反発スポンジを仕込みたい。
しかし、革と異素材の組み合わせを嫌うお客様が納得するだろうか、、、


かくして、レザーカメラマンベストへの険しい道のりがスタートしたのでした。

Aさん、まだ始まったばかりですが、心踊るようなご依頼を有難うございます! 


【市島】
2018-08-03 : 未分類 :
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プロフィール

head factory

Author:head factory
創業1935年、日本の革ジャンメーカー浅草カドヤ。本社工場ザ・ヘッドファクトリーでは、職人それぞれが一人一着縫いにて既製品の製作、オーダーメイド、カスタム、リペア、そして製品管理を行なっています。
所在地:東京都台東区西浅草3-29-21 株式会社カドヤ本社ビル 6F/7F

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